あすなろホーム(岩手)
岩手の陸前高田の「あすなろホーム」さんからの「つたえ」のレポートです。
岩手の海岸部は、中心市街地が海側にあって、大きな被害が出ている。でも、みんな支え合って、生きてきたんだなぁと思う。
かんばっぺし、岩手!
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大切ないつもの暮らし
3月11日 (金) 午後2時46分
強い地震の後、大津波に襲われました。あすなろホームは、高台にあったため難を逃れましたが、黒い水と土ぼこりやしぶきそして高田松原の松とともに私たちの大切な人や場所がみるみるうちに津波に飲み込まれてしまいました。
その時あすなろホームでは、午後の休憩が終わり作業を開始したばかりでした。強く長い地震に皆怯え戸惑いましたが、一緒にいたことでお互いを力にし、誰一人パニックにならずに済みました。その夜は、地域住民と作業用のホッカイロで暖を取り、販売用のお菓子を分け合って不安な夜を過ごしました。
いつもの・・・
3月中は避難所として、家族が迎えに来るまで利用者とともにあすなろホームで過ごしました。通所施設のため、非常食や寝具そして反射式ストーブなどを何とかしようと動き回っていました。みんなはすることもなく作業場に集まってただラジオからの悲しい情報に耳を傾けているばかりでした。ふと気がつくと口数が少なくなり、笑顔が消えていました。現状がよくわからない不安と、家に帰って家族と過ごせない寂しさがあったのでしょう。そこで3日目からは、係り分担をし、掃除・川へ水汲み・料理そして残っていたいつもの作業を少しずつ始めました。体を動かすことにより心も動いたのでしょうか、いつもの表情がだんだん見られるようになってきました。
4月に入り、生活状況確認に職員が手分けをして回ると、避難所や親戚宅での生活は、周りの人との関係が本人にとっても家族にとっても厳しく、通所開始を望む声が多くありました。できることから始めようと考え、津波・地震の被害が少なく、車で送迎できる範囲の方のみを対象に、4月4日から通所を再開しました。初日は12名の利用でしたが、再開したことを地域の新聞で広報したところ、なんと市外の利用者が家族に送られて通所してくることもあり、すぐに20名を超えました。こんな時だからこそ、いつもの場所でいつものように作業することが利用者の精神安定にも繋がること、そして家族が次に向かっての行動(片付けや手続き・安否確認など)ができる時間が確保できることなど、通所施設の必要性を強く感じました。
働くということ
当施設での活動は、お菓子作りなどの食品の製造と販売・民間企業などからの下請け作業でした。これまでの販売先の市役所・道の駅・各企業そして私たちを作業所時代から暖かく支えてくれた住民宅が、津波の被害にあったため、お菓子を作っても売り先がなくなってしまいました。数箇所あった下請けの作業も企業が流れたり、生産しなくなったりしてなくなってしまいました。
それでも、毎日通所してくる利用者の笑顔が増えるように、知り合いの企業の計らいで新しい袋詰め作業を始められたり、残っていた材料でお菓子を焼いて、今までお世話になっていた地域の方々に届けたりしました。仲間と共に作業に夢中になったり楽しい話をしたりしていると、家が流れたことや自分の大事なものを失った悲しみがその時だけでも忘れられたのか、笑顔がこぼれる人が日に日に多くなっていったように覚えています。みんなの暖かさ、仲間という絆の強さがあったからこそ、私自身も前を向いて歩み続けられたと感じています。
心より感謝
震災後、全国の皆様からいろいろな支援物資だけでなく、たくさんの暖かい言葉をかけていただきました。だからこのような状況になっても私たちは『ひとりではない』ということを強く感じ、頑張り続けてこれました。2年半がたとうとする今でも、皆様の暖かな支えには感謝の念でいっぱいです。
陸前高田の町は、まだまだどこに町ができるのかもわからない状態ですが、「また売りに来てもいいよ。」という声に励まされ、週に3回ペースで地域に出かけ訪問販売を再開しています。お客様と笑顔をかわす喜びを実感しています。また、全国の皆様が行ってくれる復興イベント等での販売に商品をたくさん送らせていただきました。今後も「ようし、売るぞー。」と思っていただけるように大切に商品を仕上げ、商品開発にも取り組んでいきます。