第481話  小高区塚原地区

 
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南相馬市小高区塚原地区。東京電力福島第一原子力発電所から15キロの距離。

住宅地は津波で跡形もない。この地区では15人が犠牲となった。

津波に耐えた「奇跡の二本松」が海を睨んで立っている。(残念ながら、一本は枯れている)。

もう一本は何とか残せないものか。

高台に上がると「諏訪神社」がある。

地震で鳥居は崩れたが、ここに避難した多くの住民の命を救った。

「何かあったら明神様に逃げろ」

これは、いわき市薄磯地区の住民から聞いた昔からの言い伝え。

明神様はいわき市薄磯地区の高台にある「薄井神社」のこと。

言い伝えを守り神社に避難した30人の命は救われた。

津波は、薄井神社の鳥居の下の階段まで押し寄せてきた。

「諏訪神社は、 小高区塚原地区の避難場所になっていたから、住民はここさ逃げてきて助かった」と語るのは、神社の真下に住む鎌田良晴さん(60)。

鎌田さんは米作と酪農を営んでいた。

昨年4月16日の小高区の警戒区域解除からほぼ毎日、自宅に戻り、農機具の手入れを行っている。

牛16頭は、政府の薬殺処分に抗議、許可をもらってエサを与え、生かし続けてきた。

「牛は家族と同じ、殺せるわけがねえべ」と鎌田さん。

鎌田さんの牛達は今、大学の研究に使われている。

「仕事はもうできねえな。でも、何かしてねえと、生き甲斐まで無くしちまう。原発事故さえなかったら、もっと早く小高は復興してたのにな」と悔しさをにじませていた。

「原発事故さえなかったら」この1 年間で何度この言葉を聞いただろう。