福島市

第42話 準優勝

 

秋季高校野球東北大会が終了しました。

我が聖光学院高校は、仙台育英高校に8対4で敗れ、準優勝に終わりました。

試合後斎藤智也監督は、「発展途上のチームで、選手がここまでやってくれたことに感動しました」と話してくれました。
選手の努力を讃える斎藤監督は、準優勝の悔しさよりも、この結果に満足している様子でした。

来年春の選抜出場をほぼ確実にした聖光学院高校野球部。

これからの目標について斎藤智也監督は、「弱さを自覚してから強くなったこのチームだから、冬のトレーニングをしっかり積んで、来るべき日に備えたい」と豊富を語ってくれました。

第41話 聖光学院高校野球部

 
聖光学院高校が、軌跡の逆転勝利で、決勝進出を決めました。

斎藤監督と横山部長は、声を揃えて言いました。

「このチームは、自分達が弱いという事を自覚してから懸命に強くなろうと努力するようになった」

「今年の2年生には特に頑張って欲しい。彼らは震災の時中学3年生だった。原発事故による放射能の不安から、入学を躊躇った生徒もいたはず。保護者からも『絶対に聖光学院高校には行かせない』と電話をもらった。しかし今年の2年生は反対する親を説得し、自らの強い意志で聖光学院高校野球部に入って来てくれた」

「その決断に我々スタッフが命がけで応えなければ彼らに申し訳ない」

自らの弱さを自覚し、チーム力で懸命に闘ってきた聖光学院高校野球部が東北の頂点を目指し、今日午前10時から仙台育英高校と対戦します。

昨日、逆転サヨナラ勝ちをおさめた試合直後、斎藤監督から届いたメールを転送します。

全くの力不足で、選抜など語っては行けないチームだと思っていたので、決勝まで進んだのは不思議な感覚です。

子供達の我慢強い闘いに我ながら感動してしまいました

斎藤

第36話 高校野球東北大会

 

明日から福島市の2球場で、秋季高校野球東北大会が開幕する。

福島県からは、①聖光学院高校、②白河高校、③光南高校の3校が出場。

来年春の選抜出場をかけ、熱戦が展開される。

来年は特別に、東北から3校が出場する。

さらに、この秋季大会の優勝校が神宮大会で優勝し、21世紀枠に1校選ばれると、来年の選抜に東北から5校が出場することになる。

これはすごい!

あり得ない事を現実にする力が高校生にはある。

期待しよう。

聖光学院高校野球部の横山部長に、大会への意気込みを聞いた。

「このチームは、自分達が弱い事を認識してから強くなろうと努力するようになった。
先ずは一戦必勝で行くだけ。結果は後からついてくる」

「被災地の学校ではあるけれど、震災を背負って戦うとか、そんな不遜な考えはない。

ただ今年の2年生には本当に頑張って欲しい。

彼はら震災の時、中学3年生だった。

原発事故を受けて、入学をためらったはず。

しかし、ここにいる2年生は、命がけで親を説得して聖光学院に入学してくれた。

彼らの夢の実現の為に、我々コーチやスタッフが何をすべきかをしっかり肝に命じて、チームを作って行く」と。

弱さを認識して、強くなることに目覚めた、新生聖光学院高校野球部の戦いから目が離せない。 

第16話 星純平さんと絆

 

全盲のマラソンランナー・福島市の星純平さん(37)から、興奮ぎみに電話がありました。

「今日、白石蔵王ハーフマラソンを走って来ました。昨年よりタイムは5分縮めました。でも今日は、それ以上に嬉しい事がありました」と。

星純平さんは、2年前にマラソンを始めました。

目指すは「サブ・スリー 」。

サブ・スリーは、マラソンを3時間以内で走ること。アマチュアランナーの5%しか達成できず、目標であり夢。

しかし、星純平さんのように伴走者を必要とする視覚障害者には、かなり高いハードルとなっています。

9月初旬、北京オリンピックマラソン代表の佐藤敦之選手に桧原湖畔で2日間にわたって指導を受けた星純平さんは、今回の白石蔵王ハーフマラソンに自信を持って臨みました。

その成果が出たのがスタートから8キロ過ぎでした。

伴走者の中村さんが言いました。

「純平さん!こんなに速いペース、俺ついていけないよ。今キロ3分45秒だよ。伴走は、10キロまでが限界だよ」

それを聞いて純平さんはビックリしました。

なぜならば、純平さんは1キロ4分30秒のペースで走っているつもりだったからです。

自分の思っていたペースより45秒も速く走り、さらにかなり体に余裕があることに、純平さんは改めて驚くとともに、佐藤敦之選手の指導力の高さと効果に、オリンピックを目指すアスリートのレベルの高さを実感しました。

その時、伴走者の中村さんが横を走っていた一人の青年に声をかけました。

「お兄さん、速いね。もし可能だったら、10キロから15キロまでの5キロを、私の代わりこの人の伴走してもらえないでしょうか?」。

青年は、少しはにかんだように言いました。

「ぼ、ぼ、ぼくで良かったら、喜んで」

青年は地元の養護学校を卒業した25歳の知的障害者でした。

菊地さんといいます。

菊地さんは、星純平さんの予想を上回るペースで、純平さんを引っ張ってくれました。

約束の15キロで菊さんは、「ゴールで待ってます」と言い残し、あっという間に駆けていきました。

15キロからゴールまでは、いつも純平さんをサポートしている斉藤さんが伴走を担当しました。

斉藤さんとゴールした星純平さんを待っていたのは、菊地さんの満面の笑顔でした。

隣には、息子が無理やり伴走をかってでたと思い込んでいた菊地さんのお母さんが心配そうに立っていました。

握手を求めて礼を言う純平さんに菊地さんは、「僕はいつも誰かの世話になっています。だから、困っている人がいたら、助けてあげたいんです」と、たどたどしいが、しっかりとした口調でいいました。

視覚障害者を知的障害者がサポートして走る姿に、日本の進むべき未来の福祉やスポーツ、社会のあり方を重ねて、胸が熱くなりました。

星純平さんと菊地さんをつなぐ一本の輪を、純平さんは「絆」と呼んでいます。

第6話 星純平さん

全盲のマラソンランナー・福島市の星純平さん(37)から、興奮ぎみに電話がありました。

「今日、白石蔵王ハーフマラソンを走って来ました。昨年よりタイムは5分縮めました。でも今日は、それ以上に嬉しい事がありました」と。

星純平さんは、2年前にマラソンを始めました。

目指すは「サブ・スリー 」。

サブ・スリーは、マラソンを3時間以内で走ること。アマチュアランナーの5%しか達成できず、目標であり夢。

しかし、星純平さんのように伴走者を必要とする視覚障害者には、かなり高いハードルとなっています。

9月初旬、北京オリンピックマラソン代表の佐藤敦之選手に桧原湖畔で2日間にわたって指導を受けた星純平さんは、今回の白石蔵王ハーフマラソンに自信を持って臨みました。

その成果が出たのがスタートから8キロ過ぎでした。

伴走者の中村さんが言いました。

「純平さん!こんなに速いペース、俺ついていけないよ。今キロ3分45秒だよ。伴走は、10キロまでが限界だよ」

それを聞いて純平さんはビックリしました。

なぜならば、純平さんは1キロ4分30秒のペースで走っているつもりだったからです。

自分の思っていたペースより45秒も速く走り、さらにかなり体に余裕があることに、純平さんは改めて驚くとともに、佐藤敦之選手の指導力の高さと効果に、オリンピックを目指すアスリートのレベルの高さを実感しました。

その時、伴走者の中村さんが横を走っていた一人の青年に声をかけました。

「お兄さん、速いね。もし可能だったら、10キロから15キロまでの5キロを、私の代わりこの人の伴走してもらえないでしょうか?」。

青年は、少しはにかんだように言いました。

「ぼ、ぼ、ぼくで良かったら、喜んで」

青年は地元の養護学校を卒業した25歳の知的障害者でした。

菊地さんといいます。

菊地さんは、星純平さんの予想を上回るペースで、純平さんを引っ張ってくれました。

約束の15キロで菊さんは、「ゴールで待ってます」と言い残し、あっという間に駆けていきました。

15キロからゴールまでは、いつも純平さんをサポートしている斉藤さんが伴走を担当しました。

斉藤さんとゴールした星純平さんを待っていたのは、菊地さんの満面の笑顔でした。

隣には、息子が無理やり伴走をかってでたと思い込んでいた菊地さんのお母さんが心配そうに立っていました。

握手を求めて礼を言う純平さんに菊地さんは、「僕はいつも誰かの世話になっています。だから、困っている人がいたら、助けてあげたいんです」と、たどたどしいが、しっかりとした口調でいいました。

視覚障害者を知的障害者がサポートして走る姿に、日本の進むべき未来の福祉やスポーツ、社会のあり方を重ねて、胸が熱くなりました。

星純平さんと菊地さんをつなぐ一本の輪を、純平さんは「絆」と呼んでいます。