第91話 仮設離婚

 

★「東日本・地震・津波・原発大震災」から、まもなく1年8ヶ月になります。

仮設住宅では二回目の寒い冬を迎えます。

震災後、暖かい大熊町から会津若松の仮設住宅に避難している69歳の女性にインタビューしました。

彼女は、8人家族でしたが、原発事故を受け、今は一人ぼっちで仮設住宅に住んでいます。

会津若松の仮設は5ヵ所目の移動でした。

同い年のご主人は将来の不安から酒浸りになり、いつしか暴力を振るうようになりました。

50年連れ添った夫婦は、仮設住宅で、離婚しました。昨年12月の事です。

彼女は、「主人の優しさと生きる希望を奪い、家族の絆、故郷までも奪った原発が憎い。孫の顔が見たい」と泣きました。

今までの、当たり前だった幸せな日々を、 取り戻すことのが、彼女の復興なのです。

離婚後、雪道で転倒し、右手首を骨折しました。

独り暮らしのこの女性の孤独感と、不自由な思いを想像すると涙が止まりません。

放射能では誰も死んでいません。

しかし、原発事故は、故郷を奪い、家族をバラバラにしました。

『原発事故さえなかったら』その一言が重くのしかかります。