第87話 届け姫花ちゃんの夢

 

いわき市の沿岸部、薄磯・豊間地区を友人のフォトジャーナリスト・高橋智裕さんと訪ねました。

風が強かったものの、青空と海の碧さが、心を癒してくれました。

基礎しか残っていない家ばかりですが、綺麗な花と可愛いいキャラクター人形が手向けられている場所がありました。

2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9の大地震が東北を襲いました。

その40分後、豊間、薄磯地区に13メートルの津波が押し寄せました。

豊間中学校の体育館の時計は、3時28分で止まっています。

この地区では、100人が亡くなり、今も10人が行方不明となっています。

いわき市では津波で、小学生が二人犠牲になりました。

二人とも、豊間小学校に通っていました。

小学校4年生の鈴木姫花(ひめか)さん(当時10歳)は、花が手向けてあるお父さんの実家で、津波にのまれました。大好きなおばあちゃんと一緒に。

鈴木姫花ちゃんは、絵を描くのが大好きで、小さい頃から沢山のコンクールに入賞していました。

「10年後の自分へ」という作文には、デザイナーになりたいという夢が綴られていました。

姫花ちゃんの夢は、東日本大震災によって絶たれてしまいました。

でも、両親や多くの人の思いが支援をよび、姫花ちゃんの絵がハンカチになりました。

この絵は、姫花ちゃんが小学校3年生の時に描いたもので、故郷の「塩屋崎灯台」をモチーフに、明るい色使いが印象的です。

幼い頃から素晴らしい色彩感覚を持っていた姫花ちゃんの絵は、生きる希望にみちあふれています。

姫花ちゃんのハンカチに興味のある方は、フォトジャーナリスト・高橋智裕さんのホームページをご覧下さい。

ハンカチの売り上げは全て、災害遺児の為に使われます。

「きょうされん全国大会」を成功させましょう。

鈴木姫花ちゃんが津波で流された、お父さんの実家です。

基礎しか残っていません。

高台に見える神社が明神様(薄井神社)です。

多くの住民がこの神社に逃げて助かりました。

家の基礎の前には姫花ちゃんのお父さんが、残ったブロックで「HIMEKA 」と作りました。

天国から見えるように。

毎日ここに来て手を合わせてお父さんの貴さんは言います。

「姫花、助けてあげられなくて、ごめんね」

すると姫花ちゃんの声が聞こえます。

「パパ、頑張ってね」

その声を聞いて、貴さんは頑張っています。