第624話 一時帰宅

 

 
震災前、南相馬市小高区で今野外科医院を営んでいた今野明先生が、新潟県に避難している高齢のお母様の為に、一時帰宅しました。

今野先生からのメールをお読みください。

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本日、新潟県三条市に一人で避難中のオフクロが、一時帰宅しました。

三条市の計らいで、三条からボランティアで小高区にお手伝いの出来る方を募り、家の後片付けを手伝ってくれました。

ラジオ福島の深野アナウンサーも同行していました。

1年ぶりぐらいで帰宅した母屋は、ネズミの尿の臭いが充満し、私が2週間前に仕掛けたネズミ取りシートに10匹ぐらいかかっていました。

まだ動いているのも、ミイラのようになっているのもありました。

あまりの自宅の変わりようにオフクロは涙が 止まりませんでした。

かなり愕然としていました。

それでも、三条から来て下さったボランティアの方のお陰でかなり片づいたようです。

自分は午後の勤務がありましたので、お昼頃にその場を離れました。

87歳にとっては厳しい現実です。

今日は当直ですが、オフクロはまだ三条には着いていないと思います。

電話でその後の様子を聞くのも気が引けて聞けません。

こんな思いを多くの避難者の方はじっと耐えているのでしょうか。

高齢者にはキツすぎる状況です。

いつか患者さんが帰り際に残していった言葉が忘れられません。

「先生、俺の生きているうちに帰れっぺか」

自分はうまく答えられませんでした。