第561話  感謝ロードにのって

 

 
全盲のマラソンランナー・福島市の星純平さん(37)はフルマラソン42・195㌔を3時間を切って走る「サブ・スリー」を目指しています。ベストタイムは3時間5分15秒。

星純平さんが最も苦労しているのが、練習及び試合の時の伴走者の確保。

10月20日に須賀川市で行われる「円谷幸吉メモリアルマラソン」のハーフ部門にエントリーしましたが、なかなか伴走者が見つからず困っていたところ、私の友人で須賀川市の花卉農家の和田康伸さん(36)が最高の伴走者を紹介してくれました。

和田さんは「震災で傷ついた心を、花で笑顔にしよう」と頑張る花農家で、昨年、毎日農業記録賞優秀賞を受賞しています。

和田さんが紹介してくれた星純平さんの伴走者は、地元須賀川出身の ランナーで自衛官の加藤将士さん(29)。

毎年11月に行われている福島駅伝のメンバーでもあり、各種大会で常に上位に入る実力者です。
(昨年の鶴ヶ城10㌔で優勝)

星さんの伴走をする加藤さんは「地元須賀川の大会で、初伴走をする事が出来てたいへん嬉しい。星純平さんの力を100%引き出せる走りを心がけ、絆を繋いでいきたい」と抱負を語ってくれました。

伴走者・加藤さんを紹介してくれた和田さんに、星純平さんが送った感謝のメールをお読み下さい。

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和田  様

初めまして。
視覚障がい者ランナーの星純平と申します。

この度は、円谷幸吉マラソンの伴走者として、加藤将士さんをご紹介くださいまして誠にありがとうございました。

心よ り感謝申し上げます。

和田さんのランナーとなられたエピソードをご紹介くださいまして、ありがとうございます。

敬愛される父親。そして切磋琢磨した兄弟。とても素敵な家族の姿が思い浮かびます。

和田さんが震災に負けず、正面から災害にも立ち向かい家業を続けられている力の源はマラソンなのでしょうね。

僕は多くの方々のご支援を賜りマラソンを始めてから3年9ヶ月となりました。

その3年9ヶ月前の自身とは全く見違えるほどの心の在り様となって自分自身に驚いています。

生まれながらの難病を抱えて弱視として20歳まで過ごしてきました。

教科書や黒板の文字も見えたり見えなかったり色弱のため色を知りません。

体を動かす事は好きでしたが、 中学校・高校での体育は球技が中心となって僕の視力では見学ばかりの悔しい6年間でした。

20歳から症状は進み26歳には盲人の生活となりました。

家族には心配をかけたくなくて見えるふりをしてきました。

本当に孤独でした。神や運命に疑問を持ち、生きる事に悩み、呪ってきました。

いつも絶望と向きあってきました。そして、何もかもを視力障がいのせいにする狡猾でだらしのない性格になっていったのです。

日々「このままではいけない」と思ってはいましたが脱却する方法が見つけられません。

そんな時にあるヘルパーさんから視覚障がい者マラソンを進められたのです。

自由に外出もできず、体も心も閉じ込められた息苦しい自室から外に出られるのであ ればと言う気持ちでマラソンを始めました。

きっかけはともかく、走りたかった訳じゃなかったんです。

そして走り始めました。

5kmを歩くと変わらないぐらいのスピードで走ってくると膝が痛くて3日間は階段が上がれませんでした。

しかし、その痛みは十数年もの間、運動を忘れてしまっていた、もう二度とできないと思っていた自身にとって、とても新鮮な痛みと刺激だったのです。

大会に出れば、走ると言うよりは痛みに耐えると言う方が適当でした。

苦しくなると自分の声が聞こえてきます。「目が見えないのにここまでよくやった」と。

そして「走る苦しみと見えないとは関係ないじゃないか。何でも目の悪いせいにするのはやめろ」と、もう一人の自分から声 が聞こえたんです。

この声が僕のマラソンをする理由となりました。

今ではそれを乗り越え、絶望しかなかった自分に可能性を見出し、自分に立ち向かう強さと信じる力を得る事ができたと確信しています。

この奇跡も多くのご支援くださった方々のお力があってこそと思って心より感謝いたしております。

人生において感謝を思う人と出会える事の幸せを強く噛みしめている毎日です。

10月20日 円谷幸吉メモリアルマラソンではお世話になります。

和田さんとお会いできます事を心より楽しみにしております。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

本当にありがとうございました。

星 純平

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今後の練習について加藤将士さんは星純平さん に、「私が福島に行きますから心配しないでください。あづま運動公園に適したコースがありますから。そこで練習しましょうと」と話してくれた。
 
星純平さんのサブスリーへの挑戦は、多くの善意に支えら続いている。

感謝ロードにのって。