第538話 請戸小学校の52分①
140人が亡くなり、今も30人が行方不明となっている請戸地区は、漁業を中心に太平洋の恵みと共に生きてきた。
海沿いに立つ請戸小学校は、1階は津波で破壊されたが、奇跡的に2階部分が残っている。各教室の時計は3時38分をさしたまま。そこには生死を決めた運命の52分間があった。
地震発生直後、近隣の住民が「この地震は普通じゃない。津波がくる。子供達を避難させろ」と学校に集まった。校長は直ぐに避難を決めた。西の空は赤く燃え、東の太平洋は黒い雲に覆われていた。
地震発生時、すでに下校していた1年生11人を除く2年生から6年生までの83人が校舎にいた。
校長と教頭が学 校に残り、13人の教師は6年生を先頭に、災害時の避難場所に指定されていた学校から西へ1・5キロ離れた大平山を目指した。生徒の列に等間隔で教師が入り、大きな声で情報を伝達しながら歩き始めた。車椅子の児童もいた。
大津波が請戸の町を飲み込むのに、あと40分と迫っていた。
結果、請戸小学校は一人の犠牲者も出さなかった。
子供達の命を救った避難行動について、当時の請戸小学校の教師・田中和美さん、佐藤信一さん、石川美代子さんの3人に話を聞いた。
放送は、8月26日(月曜日)夜7時から。
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