第502話  飯舘の母

 

 
全村避難の飯舘村の、福島市松川仮設住宅の責任者の60代の女性が、大腸癌になり手術します。

彼女は「仮設住宅から孤独死を出させない」をモットーに、高齢者の心身のケアに懸命に取り組んできました。

雨の日も雪の日も、独り暮らしのお年寄りの仮設を回り、声をかけ続けていました。

故郷へ帰れない不安とストレスから、自暴自棄に陥る高齢者を、誠心誠意支え「仮設の母」と呼ばれていた彼女の 肉体を癌が蝕んでいたのが分かったのは、5月初旬の事でした。

彼女の癌の原因は、飯舘村の住民が抱えているストレスそのものだと思えてなりません。