第417話  ③鈴木姫花さんに

 
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いわき市では、小学生2名が津波の犠牲となった。2人とも豊間小学校の児童だった。

小学校4年生だった鈴木姫花さん(10)は、絵を描くのが大好きだった。小学校3年生の時に描いた灯台の絵が、大きな賞を頂いた。黄色い空に真っ赤な太陽、一羽のカモメが大空を舞う姿は、命の輝きに溢れている。

姫花さんの将来の夢は、デザイナーになる事だった。その夢は震災によって絶ちきられた。

姫花さんは、大好きだったおばあちゃんと一緒に津波に流された。

玄葉さんと姫花さんの父、鈴木貴さんに会った。姫花さんが最期にいたのは貴さんの実家だった。
2人は線香を手向け、手を合わせた。

基礎しか残っていない家の入り口には、ブロックで「HIMEKA 」と描かれている。

「天国の姫ちゃんに見えるように」と父、貴さんは話してくれた。

震災後、車で5分の高台に貴さんは自宅を建てた。どうしても、姫花さんが最期にいた場所から離れられなかったから。

自宅2階には姫花さんの部屋がある。

そこにはオシャレした姫花さんの写真と、描きためた絵が置かれている。

「家族の為にも苦しみを乗り越えて頑張ってください」。

玄葉さんから貴さんへの、これがやっとの言葉だった。

震災から2年2ヶ月が過ぎたが、家族を亡くした人達に節目はくるのだろうか。

貴さんは姫花さんが生きてきた証を残すために、灯台の絵をハンカチにした。

売上は全ていわき市に寄附 され、災害遺児の為に使われる。

昨年12月に1回目の寄附をしたが、間もなく2回目の寄附を行う予定だという。

「姫花や母を助けられなかった事は今も悔やまれます。でも、後ろばかりを向いてはいられません。泣いても叫んでも、戻ってこないのですから、だったらできるだけ、笑顔で前を向いて頑張って行きます」と語ってくれた。

貴さんと玄葉さんはかたく握手を交わして別れた。