第396話 薄磯海岸
海岸から200メートルの豊間中学校の体育館の時計は、3時28分で止まっている。
薄磯地区で唯一営業を再開した民宿「鈴亀」の鈴木幸長さんは、震災後、瓦礫の下から見つけたハマナスの新芽を門の前の花壇にさした。
震災の年には一輪も咲かなかったハマナスの花。
しかし、昨年は花を五輪咲かせた。
そして今年は、写真のように多くの花が咲いた。
それは未来への「希望の華」だった。
幸長さんは言う。「萎えた心を励ましてくれたハマナスの花に感謝している。薄磯の灯りを消さないためにも、もう一息頑張ろうと思っている」と。
鈴亀から車で1分。津波で亡くなった鈴木姫花さん(当時10歳)が最後にいた場所には、今日も綺麗な花が手向けられていた。
この日は父・貴さんがテレビ局に取材されている姿があった。
姫花ちゃんの事を、マイクの前で話せるようになった貴さんの気持ちの変化に、少し嬉しくなった。
2013年5月17日 | いわき市