第267話 上野さんのお宅
3月11日(月曜日)。
家族4人を亡くした、南相馬市萱浜(かいはま)の上野敬幸さん(40)の自宅を訪ねた。
上野さんは、津波で破壊された家の前に、自宅を新築した。
それは上野さんの家族への愛と、男の意地を感じた。
上野さんは2階に、亡くなった長女(8)と長男(3)の部屋を作った。
大好きだった空と雲に囲まれている。
この部屋だけエアコンがつけっぱなしだった。
上野さんにその訳を聞くと「子供達が風邪をひかないため」という答えが返ってきた。
返す言葉がなかった。
上野さんの心の中に、子供達は生きている。
津波に流されずに残った、数少ない姉弟の想いでの品を、この部屋に丁寧に集める事が、今の上野さん が出きる最大の供養だ思った。
「私は子供達を救えなかった、ダメな父親です」
家族を失った遺族には、震災から2年目の節目などあるはずはなかった。
2013年3月12日 | 南相馬市