第230話 薄磯の朝

 
風の強い、いわき市薄磯の朝。
 
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塩屋崎灯台が、土台だけになったこの地区の、進まぬ復興を見つめている。

観光バスが、目の前を通り過ぎて行く。 満員のお客さんを乗せて。

車窓からこの景色がどのように見えているのだろうか。

「薄磯では100人が津波で亡くなり、今も10人が行方不明になっています。ここは観光地でありながら最大の被災地の一つです。どうか、手を合わせ下さい」。

そんなアナウンスが流れていることを、心から期待する。

観光地としての宿命。

観光バスは復旧の第1歩だから歓迎しなくては。

でも。

この薄磯に、いつ来ても、綺麗な花が手向けられている場所がある。

観光バスからも見えるはずだ。

その花が何を意味するか、誰かが伝えなければ、震災は風化していく。

間もなく震災から2年。

家族を失った遺族に節目など無い。