第165話 上野敬幸さんの思い

 
南相馬市原町区萱浜(かいはま)。津波により137人が亡くなり、今も10人が行方不明となっている。
 

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海岸から1キロの上野敬幸さん(39)の自宅は10メートルの津波に襲われたが、奇跡的に外観だけが残った。

しかし、最愛の長女(8)と、長男(3)、それに両親の家族4人を亡くした。

被災した家の玄関前の慰霊台には、新しい子供達の写真が置かれていた。

そして、津波の被害を受けた家の東側には、新しい自宅が建築されていた。

ここに住むのは、上野さん夫婦と震災後誕生した次女の3人。

上野さんの自宅周辺は基礎も撤去され、広い空き地になっている。隣の家までは200メートル。回りに街灯も無い。
一時期この場所は、住宅建築は許されていなかった。しかし上野さんは諦めずに行政を説得した。それは上野さんの命をかけた陳情だった。

家族と過ごした大切なこの場所は、家族を失った悲しい場所でもある。

震災から1年10ヶ月。上野さんの家族を想う気持ちは、ここから離れないという強い信念となって、3月に竣工する。

 

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